メール 配信 ソフトの重要なお知らせ
インターネットを誰もが日常的に利用するようになり、社会経済活動の「窓」一言で言うと、インターネットがあまりに巨大化したため、もはや助け合いの精神で運営できるレベルを超え始めているからです。
インターネット上を流れる情報量が急増すると、こういった情報をスムーズに流すための設備が、今まで以上に必要になってきます。
通信会社やISPが光ファイバーを敷設したり、ルーターと呼ぶ通信機器を設置したりするなど、非常に大きなコストがかかります。
以前はインターネットの利用者の数も限られていました。
技術革新によってこうした設備のような存在になると、これまでの助け合いの精神では、だんだん立ち行かなくなってきました。
「はじめに」で紹介したように、通信会社やインターネットサービスプロバイダー(ISP)が、「我々が構築したインフラに、タグ乗りするヤツは許せない」と言い出し、助け合いどころかインターネット上でサービスを提供するサイトに反発し始めました。
なぜ、インターネットの助け合い精神は崩れ始めたのでしょうか。
コストが下がってきたので情報が増えても通信会社やISPは何とか対応できました。
情報量の増加ペースが急激に加速してしまったのです。
関係者の負担がそれほど大きくなければ、みんながそれぞれ費用を出し合って、助け合いながらインターネットを育てて運営するという形も現実的でした。
負担が一定レベルを超えると、そんなこともできなくなります。
その転換点は、ビジネスとしてインターネットが本格的に使われるようになったことでした。
単なるお遊びではなく、インターネットでビジネスをする人たちが増えると、これまで以上に品質の確保やセキュリティが重要になってきました。
嘗てのインターネットの世界であれば、仲良し村の中での小さな出来事で済んだ問題も、今ではインターネットの巨大化によって、大きな問題となります。
例えば、インターネット上でサイバー攻撃が起きると、経済活動の動脈となっているインターネットの機能が奪われ、その被害は甚大なものとなります。
また、以前であれば問題が起こっても、「品質が多少悪くてもインターネットだからしようがない」と、サービスを提供する側も使う側も理解してくれました。
最近では、ビジネスとして利用しているため、サービスを提供する側は、「品質が良くないと損害が出てしまうので困る」と言うし、使う側も「利用料を支払っているのに、問題が起こるとは何ごとか」というふうに、人々の考え方が変わってきています。
確かに動画配信でコマ落ちした番組しか視聴できないとしたら、誰もこんなサイトは訪問してくれなくなるでしょう。
インターネットのビジネス利用によって、品質やセキュリティを確保するためのコストがさらに膨れ上がっているのです。
さらに問題を難しくしているのは、この変化があまりにも急激であることです。
インターネットが普及したのは、実はたった十年あまりのことです。
ビジネスで本格的に使うようになって、設備コストが膨れ上がったのはここ数年です。
その巨大化のスピードがあまりにも速いために、インターネットをスムーズに運営していくためのコスト負担の方法について、明確なルールが確立していません。
ルール整備の遅れは、これまで暗黙のうちに想定されてきた、助け合いに基づく「インターネットの均衡」を崩し始めているのです。
助け合いに基づく「インターネットの均衡」が崩れると、具体的には何が起きるのでしょうか。
一言で言えば、現実世界では許されないようなことが起こる可能性があります。
ルールが確立されないままビジネス展開が進んでいくと、特定の人たちをインターネットから締め出したり、インターネットを利用する際に必要以上にお金を取ろうとしたり、あるいは自分だけ有利に立ち回ってインターネットを利用したビジネスをしようといった、様々な動きが出て来る可能性があります。
当初のインターネットは、たとえて言うと、きれいな高原の見晴らし台を利用してもらうために、地元のボランティアのみなさんが清掃活動をしたり、危険な箇所には看板を立てたりして、ピクニックを楽しみに来る不特定多数の人たちにこの見晴らし台を利用してもらってきたという世界です。
そのうち少しずつ観光客が増えてきて、ボランティアだけでは対応できないので、村役場から給料をもらいながらみんなで助け合って清掃活動や整備をするようになりました。
あまりに観光客が増えて、給料だけでは清掃用の洗剤なども賄えなくなってきました。
そこである日突然、柵を立てて見晴らし台に入るのに高額な入場料を払いなさい、という人が出てきたらどうでしょう。
確かに、高額な入場料で見晴らし台は整備され、今までよりもきれいな設備になるかもインターネットの均衡が崩れると、こうした現実世界では許されないような事が起こる可能性があります。
というのは、インターネットの世界は、現実世界では当然と考えられているルールがまだ完全には整備されていないからです。
見晴らし台の例ではありませんが、自由にインターネットが使えなくなったり、インターネットの利用が制約されたりする可能性があるのです。
助け合い精神が築いた「みんなのインターネット」を守るために、どうすればよいのか「インターネットが巨大化しているというけれど、そんなに差し迫った話なのか?」と疑問に思われる読者の方も多いと思います。
インターネットを利用している分には、まだ問題を感じないかもしれません。
「インターネットの均衡」はすでに崩れ始めています。
本書では、そうした具体的な事例をご紹介しながら、私達がこれからもインターネットを快適に利用できるようにするためにどのようなルール作りが必要なのか、という点について考えてみたいと思います。
「インターネットの均衡」を巡る議論は、社会インフラとなったインターネットの将来を考えることなのです。
まずは、インターネットの助け合い精神から振り返ってみます。
今でこそ「みんなのインターネット」となりましたが、もともとインターネットはアメリカで軍事技術として開発されました。
というのも、戦場で通信回線が途切れた場合、その回線を迂回して別のルートで通信がつながるようなネットワークが求められたからです。
このインターネットはやがてアメリカの研究者の間で使われるようになり、いわば仲間内での通信手段として使われるようになりました。
仲間内の通信手段ですから、この段階では通信の手順などは大まかに決めておいて、何か問題があったら関係者で話し合えばよいという仕組みだったわけです。
実は、こうした仲間内の通信システムとして登場したインターネットは、いまだにそうした緩やかな試行錯誤型の文化の上に成り立っています。
この試行錯誤型の文化というのは、実は通信サービスの世界では画期的なことでした。
電話に代表されるそれまでの通信サービスは、通信会社がきちんと作動試験を実施して、「これなら大丈夫」という太鼓判が押された段階で世に出るというのが常でした。
ある意味当然のことです。
作りかけの車が「とりあえず」ということで発売されたのでは堪ったものではありません。
インターネットの世界は違います。
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